賃上げできる会社を選ぶ時代|建築・不動産業界で転職先を間違えないために
「今年も賃上げしました」というニュースが増えています。
2026年度、日本企業の83.6%が賃上げを実施予定(東京商工リサーチ調査)。
春闘では5%超の賃上げ率が話題になり、賃金が上がり始めたムードは確かにあります。
でも——正直に言います。
この恩恵を受けられる企業と、そうでない企業の差は、かなり開いています。
そして建築・不動産業界は、その「差」が特に大きい業界のひとつです。
転職を考えているなら、「賃上げしている企業」を選ぶだけでは足りません。
「賃上げできる体力があり、かつ積極的に実施する企業」を選ぶ必要があります。
賃上げ企業は3タイプに分かれる
ひとくちに「賃上げ」といっても、企業の実態は大きく4つに分かれます。
【タイプA】できる & やる
├─ 収益力が高く、社員に還元する文化がある
└─ 賃上げ率5%以上・ベースアップ実施
【タイプB】できるけど、やらない
├─ 利益は出ているが、内部留保に回す
└─ 「賃上げした」体裁だけ整える(微増・一時金のみ)
【タイプC】やりたくても、できない
├─ 価格転嫁できず、賃上げ原資がない
└─ 赤字・薄利経営が続いている
【タイプD】やらない、できない
└─ 赤字だし、還元する気もない。論外
転職先としての正解はAのみです。
しかしAとBは見た目が似ているのが厄介です。
どちらも「賃上げした」と言える。でも中身は全然違います。
データで見る「賃上げ格差」の現実
大企業と中小企業の差は開いている
| 指標 | 大企業 | 中小企業 |
|---|---|---|
| 賃上げ実施率 | 93.8% | 82.8% |
| ベースアップ実施率 | 66.3% | 55.3% |
| 新卒初任給増額 | 39.5% | 21.6% |
(出典:東京商工リサーチ「2026年度の賃上げに関する企業の意識調査」)
大企業の9割以上が賃上げする一方で、中小企業は規模が小さくなるほど実施率が下がり、賃上げ率も低い。
「賃上げの恩恵は大手に集中している」と言っても言い過ぎではありません。
業種別でも格差が鮮明
全業種の中で最も賃上げ実施率が低かったのが――
不動産業:58.3%(唯一の6割未満)
一方で**建設業は85.2%**と全体平均(83.6%)を上回っています。
同じ「建築・不動産業界」でも、建設と不動産では賃上げの温度差が全然違う。
これは業界を選ぶうえで重要なポイントです。
建築・不動産業界の年収リアル
上を見れば青天井、下は薄給
建築・不動産業界の年収は、所属する会社と職種で驚くほど変わります。
デベロッパー(大手)
| 企業 | 平均年収 |
|---|---|
| ヒューリック | 約1,908万円 |
| 三井不動産 | 約1,289万円 |
| 三菱地所 | 約1,273万円 |
建設・ハウスメーカー
| 企業規模 | 年収目安 |
|---|---|
| スーパーゼネコン | 1,000万円超 |
| 大和ハウス工業 | 約965万円 |
| 中堅〜中小施工会社 | 300〜500万円 |
施工管理・設計(職種別)
| 職種 | 年収レンジ |
|---|---|
| 施工管理 | 338〜700万円 |
| 設計・施工図 | 338〜700万円 |
| 不動産営業 | 400〜700万円 |
※不動産営業はインセンティブ次第で大幅増 同じ「建築施工管理」でも、大手と中小では年収が倍近く違うことがあります。
「賃上げできる企業」を見極める5つの視点
① 価格転嫁できているか
賃上げの原資は利益です。
材料費・人件費が上がっても、それを発注先や顧客に転嫁できていない企業は、長期的に賃上げ原資が枯渇していきます。
確認方法: 面接で「最近の資材・原価上昇に対してどう対応しているか」を聞いてみる。
「厳しい」としか言わない企業は要注意。
② ベースアップか、一時金か
「賃上げした」には2種類あります。
ベースアップ(ベア)→ 毎月の基本給が上がる = 恒久的な改善
一時金・賞与増額 → その年だけ増える = 翌年また下がる可能性あり
「昨年比○%賃上げ」と言っていても、それが一時金なら実質的な年収増は一時的です。
ベースアップを実施しているかどうかを確認しましょう。
③ 有価証券報告書・決算書を確認する
上場企業なら、IR情報として平均給与・従業員数・利益が公開されています。
- 営業利益が安定して出ているか
- 売上に対して利益率が改善しているか
- 人件費比率は上がっているか(= 社員に還元されているか)
転職先候補の決算を1〜2期分見るだけで、かなり実態が見えてきます。
④ 口コミ・離職率を調べる
OpenWorkや転職会議には、実際に在籍した社員の評価が載っています。
チェックポイント:
- 「給与が上がらない」「昇給の基準が不透明」という口コミが多くないか
- 平均勤続年数が短くないか(離職率が高い = 不満が多い)
⑤ 求人票の「給与幅」を確認する
求人票の給与欄が「月給20万〜50万円」のような異様に広い幅になっていたら要注意。
「最低でもこれだけ払う」という最低ラインが低く設定されている可能性があります。
見るべきは中央値と昇給実績。
「入社後の平均年収推移」を聞ける企業は、それだけ透明性が高い会社です。
建築・不動産業界で転職を考えるなら
建設業(施工管理・設計)は「大手と中小で別業界」
施工管理・設計として転職を考えるなら、大手ゼネコン・大手ハウスメーカーか、それ以外かで年収・賃上げ環境が大きく変わります。
中小施工会社が悪いわけではありませんが、「賃上げ体力がある企業かどうか」は必ず確認してください。
不動産業は「インセンティブ依存」に注意
不動産業界は基本給が低くてもインセンティブで稼げる構造の会社が多い。
年収1,000万円超えも現実的ですが、固定給ベースでの賃上げ恩恵は受けにくい業態です。
「業績連動の賃上げ」なのか「ベースアップによる賃上げ」なのかを区別して考えましょう。
デベロッパー・REITは「入口の壁が高い」
大手デベロッパーは平均年収が高く賃上げ環境も良い。
ただし採用枠が少なく、転職難易度も高い。
資格(宅建士・一級建築士)や実務経験を武器にして狙いに行く価値は十分あります。
まとめ:賃上げブームに流されず「企業の体力」を見よ
❌ 「賃上げしている」という言葉だけで判断する
✅ 「賃上げできる体力があり、継続して実施している」企業を選ぶ
2026年度も賃上げのニュースは増えるでしょう。
でも、恩恵を受けられる人とそうでない人の差は、どの企業を選ぶかで決まります。
建築・不動産業界は、同じ職種でも会社によって年収が倍以上変わる世界。
転職を考えるなら、ブームの空気感ではなく企業の財務・文化・実績を冷静に見極めてください。
賃上げできる会社に行ける人が、この時代の勝者だと思っています。
参考: