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一級建築士学科試験法規構造構造計算試験対策

一級建築士【法規・構造】許容応力度・保有水平耐力・限界耐力計算の違いと適用除外条文まとめ

「令第81条はなんとなく知ってるけど、どの計算をすれば何の規定が外れるのか整理できていない」

法規・構造で頻出のこのテーマ、きちんと整理すると得点に直結します。

今回は3つの構造計算方法の違いと、それぞれで適用除外になる令第36条の仕様規定を一気にまとめます。


まず全体像を把握する

構造計算に関する規定の全体像はこうなっています。

建築基準法 第20条(構造耐力の基本方針)

建築基準法施行令 第36条(構造方法の技術的基準)
  └─ 第36条〜第80条の3:仕様規定(この節)

建築基準法施行令 第81条(計算方法の定義)
  ├─ 第1項:時刻歴応答解析
  ├─ 第2項第一号イ:保有水平耐力計算
  ├─ 第2項第一号ロ:限界耐力計算
  └─ 第2項第二号:許容応力度等計算

令第36条第1項が基本ルールです。

構造耐力上主要な部分は、この節(令第36条〜第80条の3)の規定によらなければならない。
ただし、次に掲げる計算によってその安全性を確かめた場合は、この限りでない。

この「ただし書き」が適用除外の根拠。どの計算をしたかによって、除外できる規定の範囲が変わります。


3つの計算方法とその位置づけ

計算方法令第81条の根拠適用対象の目安
許容応力度等計算第2項第二号イ高さ20m以下のRC造・S造など
保有水平耐力計算第2項第一号イ高さ31m超のRC造・S造など(必須)
限界耐力計算第2項第一号ロ特殊な地盤・構造形式に対応可

⚠️ 高さは構造種別・規模によって異なります。令第36条の2・第36条の3も合わせて確認してください。


【許容応力度等計算】令第82条〜令第82条の4

いわゆる「ルート1・2」相当の計算です。

確認すること

令第82条 :各部材の断面に生じる応力度の計算
  長期・短期の荷重に対して、応力度 ≦ 許容応力度 であること

令第82条の2:屋根ふき材・外装材等(風圧力・地震力に対する検討)

令第82条の3:層間変形角の確認
  地震力に対して 層間変形角 ≦ 1/200(緩和規定あり)

令第82条の4:剛性率・偏心率の確認
  剛性率 ≧ 0.6(各階の剛性が全体の平均に対して60%以上)
  偏心率 ≦ 0.15(重心と剛心のずれ)

適用除外になる主な規定(令第36条第2項第三号)

許容応力度等計算では適用除外になる仕様規定の範囲は限定的です。
一方で、この計算では外れない規定(仕様規定)が多く残ります。

ポイント: 計算の精度が低いほど、仕様規定でカバーする範囲が広くなる設計思想です。


【保有水平耐力計算】令第82条〜令第82条の3+保有水平耐力

いわゆる「ルート3」相当の計算です。最もよく試験に出ます。

確認すること

令第82条  :許容応力度計算(各部材)

令第82条の2:屋根ふき材等の計算

令第82条の3:層間変形角 ≦ 1/200

   保有水平耐力の確認
   Qu ≧ Qun

重要公式:保有水平耐力と必要保有水平耐力

Qun = Ds × Fes × Qud

記号意味値の範囲
Qu保有水平耐力(建物が実際に持つ横力への抵抗力)計算による
Qun必要保有水平耐力(最低限持つべき抵抗力)計算による
Ds構造特性係数(靭性が高いほど小さい)0.25〜0.55
Fes形状係数(剛性率・偏心率の影響)1.0〜1.5
Qud地震力(令第88条による)計算による

Dsが小さい=靭性が高い=必要保有水平耐力が小さくなる、という関係を押さえましょう。

適用除外になる主な規定(令第36条第2項第一号)

保有水平耐力計算で安全性を確かめた場合、仕様規定の多くが適用除外となります。試験で狙われる主な条文は以下です。

木造関係

条文内容除外の理由
令第46条第2項第一号・第4項木造の必要壁量(壁量計算)計算で耐震性を直接確認するため
令第47条第1項継手・仕口の規定構造計算に含めて検討するため

鉄筋コンクリート造関係

条文内容除外の理由
令第73条第2項ただし書き鉄筋の継手・定着の規定靭性確保を計算で担保するため
令第77条第一号〜第五号柱の構造(帯筋比等)構造特性係数Dsで靭性を評価するため
令第77条の2第1項耐力壁の構造同上

鉄骨造関係

条文内容除外の理由
令第65条圧縮材の有効細長比座屈を保有水平耐力計算に含めて検討するため

基礎関係

条文内容除外の理由
令第38条第3項・第4項基礎の構造(不同沈下対策等)設計者の判断で対応するため

⚠️ 適用除外の条文は令第36条第2項第一号に列挙されています。試験本番では法令集を直接参照してください。完全なリストは法令集の当該条文で確認が必要です。


【限界耐力計算】令第82条の5

最も柔軟な計算方法で、地盤の特性を直接考慮できます。

確認すること

損傷限界の確認(稀に発生する地震:再現期間50年程度)
  各部材が弾性範囲内に留まること
  層間変形角の確認

安全限界の確認(極めて稀に発生する地震:再現期間500年程度)
  建物全体が崩壊しないこと
  各部材の変形能力の確認

通常の許容応力度等計算が**「力の大きさ(応力度)」で安全性を確認するのに対し、限界耐力計算は「変形量(応答変位)」**で確認する点が根本的な違いです。

また、地盤の応答スペクトルを考慮するため、同じ地域でも地盤条件によって地震力が変わります。液状化リスクの高い軟弱地盤や、特殊な構造形式に対応しやすい計算方法です。

適用除外になる主な規定(令第36条第2項第二号)

限界耐力計算で安全性を確かめた場合、令第82条〜令第82条の4(許容応力度等計算の各規定)がまるごと適用除外になります。

除外される計算内容
令第82条許容応力度による各部材の断面確認
令第82条の2屋根ふき材等の計算
令第82条の3層間変形角の計算(1/200ルール)
令第82条の4剛性率・偏心率の確認

なぜ除外されるのか?

限界耐力計算では「損傷限界」の検討の中で変形を直接確認するため、令第82条の3(層間変形角1/200)を別途確認する必要がないからです。

保有水平耐力計算よりも直接的に安全性を評価しているため、より広い範囲の仕様規定が不要になります。


3つの計算の比較まとめ

計算の高度さ(低)─────────────────(高)

許容応力度等計算  →  保有水平耐力計算  →  限界耐力計算
(ルート1・2)       (ルート3)

└──仕様規定の縛り──┘
多い(除外少)         少ない(除外多)
比較項目許容応力度等計算保有水平耐力計算限界耐力計算
安全確認の軸応力度 ≦ 許容値Qu ≧ Qun変形量(応答変位)
層間変形角必要(1/200)必要(1/200)不要(損傷限界で代替)
剛性率・偏心率必要不要不要
保有水平耐力不要必要(Qu≧Qun)不要
仕様規定の除外少ない中程度多い(令第82条〜第82条の4を除外)
地盤特性の考慮限定的限定的直接考慮する

試験で狙われるポイント

① 「Dsが小さい = 靭性が高い」の向き

Dsは0.25〜0.55の範囲で、小さいほど靭性が高い(粘り強い)構造を示します。
Dsが小さい → Qun(必要保有水平耐力)が小さくなる → 必要な耐力が少なくてすむ。

靭性が高い構造が「有利」になる仕組みを理解しておくこと。

② 限界耐力計算では令第82条〜第82条の4が丸ごと不要

「限界耐力計算を行ったのに、さらに層間変形角の確認が必要か?」という問いに「不要」と答えられるかが問われます。

③ 保有水平耐力計算で木造の壁量計算(令第46条)が不要になる

「保有水平耐力計算を行った木造建築物に、必要壁量の規定は適用されるか?」→ 適用除外(令第36条第2項第一号)です。

④ 適用除外は「計算で安全を確かめた部分」だけ

適用除外はあくまで「計算によってカバーされる内容」に限られます。基礎の規定、防火・避難関係の規定などは別の話です。混同しないこと。


まとめ

【法規・構造の頻出論点】

令第81条  →  計算方法を定義する条文(根拠はここ)
令第36条  →  仕様規定の適用・除外を定める条文(結論はここ)

計算の高度さが上がるほど、
仕様規定の縛りが緩くなる(設計の自由度が上がる)

この分野は「なぜ除外されるのか」の理由(計算で代替するから)を理解できると、丸暗記に頼らず解けるようになります。

法令集を引きながら令第36条第2項の各号を確認し、「この計算ではこの条文が不要になる」という感覚を身につけましょう!


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